最後通牒ゲームの謎 | 読書メモ#6
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Jan 10, 2022
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抜粋
- 「心の性質を理解することは、社会制度と社会行動、経済学や政治学における、活気に満ちた理論の構築に欠かせないものである。経済学は、人間の理性についての「アプリオリな」家庭のもとで、2世紀にもわたって問題を誤魔化してきた。しかし、そういう過程はもはや実のあるものではない。そうした仮定は、人間の心についての最も真実性のある理論にとって代わらなければならないのである。」by Herbert A. Simon(1996) Models of My Life
- 最後通牒ゲームはゲーム理論で非常によく使われるゲームの一つ。
- 最後通牒ゲームのバリエーションともいえる独裁者ゲームについては「実験ゲーム理論における、もっとも不可思議な結果の一つ」とまで言われている
- 行動経済学は、実験を通じて多数のアノマリーを示すことで、ヒトはエコンではないこと、またこうした”エコンとのズレ”は単なる例外やランダムなエラーなどで済まされるものではなく、多くの人に共通した「系統だった特徴がある」ということを驚くほど多くの証拠を持って示してきた。
- 経済学における「合理性(rationality)」の最も原理的な定義は、首尾一貫した好みをあらゆることに持つこと。
- 矛盾しない首尾一貫した好みを持つことを「推移性(transitivity)」
- そうした好みをあらゆることにもつことを「完備性(completeness)」
- 合理性の条件はこの2つだけ
- 「自己の利益のみを追求すること」= 「利己性(selfishness)」は必ずしも必要ではないため、他人の利益が大きくなることを喜ぶ「合理的な利他者」がいることは、この合理性の定義からはなんら問題ない
- 最後通牒ゲームにおいて、最初に渡すお金(stake)が高いほどエコンと同じような行動を取るのではないかという議論に関しては、はっきりとした結論が出ているわけでなはいがこれまでの実験を見ている限りでは、ステイクが相当大きくならない限り大きな変化はない(Andres et al. 2019, Karagozolu & Urhan 2017)
- ゲーム理論における均衡とは「相手のやることは変えられないことを前提として、自分だけがやることを変えて得をするか」を考える概念
- 独裁者ゲーム<Aさんの行動>
- 平均提案率 約20%~30%
- 相手に何かをあげる人 約三人に2人
- 半分ずつにする人 約6人に1人
- 20%の希望
- 顔も見たことのない全く知らない人のために、自分の持ち分の20%も提供できるのならば、これを社会全体で集めたらすごいことができるのではないだろうか
- 利他性というよりは観察者の目なのでは
- 偽物の目でも成立する
- 鏡に映った自分の姿が見えるようにしておくだけでズルをしなくなることは以前から知られていた
- たとえ見知らぬ人からであっても、他社から「好意」を示されると脳の報酬系が活発に反応したという報告もある
- 人とのつながりはアメ、孤独感はムチ(Cacioppo & Patrick 2008)
- 不公平回避理論(inequality aversion)
- 相手と自分との利益の差という「不平等な状態」そのものを嫌うために、ヒトはコストをかけてでもこのマイナスを打ち消す行動をとりうる