メタ認知 | 読書メモ#10
date
Dec 24, 2023
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metacognition
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Post
イントロダクション
紹介する本
- メタ認知の概略とメタ認知を使って頭をうまく使う方法を記載している本
著者: 三宮真智子さんについて
略歴
話すこと
- メタ認知とは
- メタ認知研究の歴史的背景
- メタ認知と関連する他の概念
- メタ認知と頭の良さの関係
- メタ認知で頭を上手に使う方法
メタ認知とは
- メタ認知は、自己の認知プロセスに対する認識や制御のこと。
- 書籍上では「認知のための認知」と記載。これには二つの主要な要素が含まれる。
- 認知に関する知識(メタ認知的知識) - 自分の学習や思考能力、認知的な強みと弱みに関する知識。また、特定のタスクに最適な戦略やアプローチを理解することも含む。
- 認知の監視と調整(メタ認知的活動) - 学習や思考プロセスを監視し、必要に応じて調整する能力。
- それぞれを細かくツリー上にすると以下
メタ認知的知識
メタ認知的知識は3つに分類することができる
- 人間の認知特性についての知識
- 「1度に多くのことを言われても覚えられない」、「難しい文章であっても何度か読むと理解しやすくなる」等に関する知識
- 自分自身の認知特性に関する知識も含む
- 他者の認知特性に関する知識も含む
- 課題についての知識
- 「複雑な計算は、単純な計算よりも間違えやすい」、「討論では雑談の時よりもわかりやすく丁寧に発言する必要がある」といった課題の性質に関する知識
- 課題解決の方略についての知識
- 課題をよりよく遂行するための工夫に関する知識
- 「うっかりミスを防ぐには、何度も見直しをすることが役立つ」「ある事柄についての思考を深めるには、文章や図で表してみると良い」等
- 人間の認知特性についての知識及び課題についての知識を持っていてこそ活かされる
- 課題解決の方略についての知識はさらに3つに分けられる
- 宣言的知識(どのような方略か)
- ex. 「授業で学ぶ内容を理解・記憶するためにはノートを取ると良い」
- 手続き的知識(その方略はどのように使うのか)
- ex. 「ノートを取る際には、先生の話をそもまま書かず、要点を自分の言葉でまとめ直して書く」
- 条件的知識(その方略はいつ使うのか、なぜ使うのか)
- ex. 「自分の知らなかった内容が話された時に、ノートをとる」
メタ認知的活動
メタ認知的活動は2つに分類される
- メタ認知的活動は時系列的に見ることができる
- 課題遂行の各段階によるメタ認知的行動
- メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールは循環的に働く
メタ認知研究の歴史的背景
以下の3つの研究がメタ認知の背景となる研究
- 意識心理学における言語報告の研究
- 実験参加者に、自分の意識にのぼったことを詳細に内観して報告してもらう、その報告内容を分析する
- ピアジェの認知発達研究
- 「三つの山」問題 を用いて幼児が「自己中心性」から脱却できているかを見た
- 視点取得
- 知覚的視点取得:他者が何を見ているかを理解する
- 感情的視点取得:他者が何を感じているかを理解する
- 認知的視点取得:他者が何を考えているかを理解する
- 3〜4歳ではまだ心の理論がまだ十分に形成されておらず、自分の認知を対象化し、他者の認知と比べることができない
- 自分の認知を対象化し、他者の認知と比べること = メタ認知の芽生え
- ヴィゴツキーの認知発達研究
- ヴィゴツキーの認知発達理論は言葉を思考の道具とみなす。
- 他社との言葉のやり取り、すなわち外言が、やがて内面化されて、子ども自身が自分の頭の中で音声を伴わない言葉すなわち内言によって、自分の考えを調整できるようになるという考え方。
- ヴィゴツキーの理論は現在の教育心理学研究にも大きな影響を与え続けている。
- 認知の他者調整から自己調整への移行を促すことが重要な役割であるため。
メタ認知と関連する他の概念
- 「客我」に対する「主我」
- 思考の主体としての自分を「主我」と捉え、思考の対象となっている自分を「客我」として捉える(ウィリアム・ジェームズ)
- 省察(リフレクション)
- ジョン・デューイが認知活動を振り返ることを意味する言葉として「省察」を定義
- 省察は事後的にメタ認知的活動を行うことを意味する
- リフレクションは主に学校教育に関わる実践家や教育学者が用いることが多かったが概念であるが、メタ認知は心理学で用いられることが多く、リフレクションよりも広い概念。
- ワーキングメモリの実行機能
- 初期の情報処理モデルとしては感覚記憶、短期記憶、長期記憶からなるシンプルなボックスモデルが主流
- 1970年台から短期記憶に変わる、より広い概念としてワーキングメモリという言葉が用いられ始めた
- ワーキングメモリは情報の一時保存に限らず、暗算を行ったり、人が話した内容や書かれた文章を理解したり、あるいは推論などの複雑な認知活動を行ったりする場所として位置付けられた
メタ認知と頭の良さの関係
- これまで心理学においては頭の良さは知能という概念で捉えられてきた
- 知能検査はもともと子供の知的発達の遅れを見つける目的から始まった
- 知識を幅広く現実的に捉える知能観が、旧来の知能観にとって代わりつつある
- 新しい以下のような知能研究の展開によりメタ認知を知能として含める見解が広まる
- スタンバーグによるコンポーネント理論とサクセスフル知能理論
- ガードナーによる多重知能理論
- 新しい知能観においては、メタ認知能力を知能に含めて考えている。
- 自分の認知を活用する能力、より上位の認知能力であるメタ認知を知能の枠の外に出してしまうという考え方は、もはや通用しにくくなってきている。
メタ認知で頭を上手に使う方法
- 緊張と弛緩を利用する
- 緊張と認知活動の関連性を表したヤーキーズ・ドッドソンの法則からも程よい緊張感が頭の働きを良くすることがわかっている
- 他者からの相槌と頷きをもとに発想を促す
- 一方で、相槌を打ってもらえないことで発想を抑制はされない
- 多様な考えに触れることを繰り返して思考を柔軟にする
- まず自分で限界まで考えてみる→他者の考えに触れる→自分の考えを見直すということを繰り返すトレーニングが効果的
- IPEパラダイムと名付ている
- 頭の状態をモニターする習慣をつける
- 頭を上手に使うためには、頭の中の状態に敏感になることが重要
- 現在の頭の働き具合について、3段階程度(良い、普通、悪い)の自己評価を行う
- 「今、頭の中はすっきりしているか」「頭の中にぼんやりと霧がかかったような状態になっていないか」といった問いかけを自分自身に行ってみる
- メタ認知で気持ちを整え、やる気を出す
- 心理学におけるやる気の源泉は以下で、1つの要素が他の要素に影響を及ぼす
- 「〜したい」という欲求
- 「〜は楽しい」という感情
- ポジティブな捉え方(認知)
- 学習の目標に対する分類(キャロル・ドゥエック)
- ラーニングゴール(習得目標)
- 新たな学びによって自分の能力を伸ばす。自分の成長に主眼を置く
- パフォーマンスゴール(遂行目標)
- 自分の能力に対して高い評価を得る。成長ではなく他者からの評価に主眼を置く。
- 「学ぶことで頭は良くなる」「新たな学びによって成長できる」と考え、ラーニングゴールを持つことが、挑戦意欲を高めてくれる